J000 世田谷 ツバキ (38/135)
そして、血の音は単なる水滴の音だった。
彼の足の親指は切られてはいなかった──。
──この実験には様々な見解があるが、リュウオウくんが言っていたものに、僕も賛成だ。
人は絶望で死ぬ。
今、この場であの実験内容を知っているのはリュウオウくんと僕とフジコのみ。
「僕を舐めるな。却下だよ、あんなの」
「最後まで聞きなさいな。心理実験の中身は重要じゃないの。私が求めているのはもっと単純なもの」
台東フジコは指先を噛むと、地面に掲げた。
「私がしたい勝負は〝地面に血を落としたら負け〟というもの」
彼女がそう言った瞬間、薄汚れたアスファルトに重い一滴が落ちた。
誰もが沈黙した。今さら彼女の異常性に驚くこともない。
「ルールは単純。各派閥の代表者で、戦ってもらう」
血を地面に落としたら負け。