J000 世田谷 ツバキ (25/135)

夕暮れ過ぎた頃、日常のなかの異常を、僕は生きていた。


「2個目の信号を右に行けば潰れたガソスタがあるから、そこで停まって」


台東フジコは同時に中央アタルにもその位置を知らせていた。杉並ルシエの携帯で。


手際がいい。元主人だっただけのことはある。


杉並ルシエは消化不良な表情で「着きました」と答え、直後にガソリンスタンドに車を停めた。


「ご苦労」


そこは田舎道にある、ひと気のないガソリンスタンドだった。


すでに廃業し、車避けのチェーンは切られ、壁には巨大でカラフルな英字で落書きが書かれていた。


〝twenty4 Hours〟か。


近くは林と畑、踏み切りの音だけが聞こえる。


文京ゼンイチは、車の後ろでボロ雑巾のようになっていた。ゴルフクラブもすでに離している。


「文京さん。どうせ、SCMは持ってないんでしょ?」


フジコが足で彼をつつくと、小さな呻き声が聞こえた。


「サランラップもあったわよね? リュックに」