J000 世田谷 ツバキ (24/135)
「ざっけんな!」
外で文京ゼンイチが叫び、バイクの運転手が鍵を探すなか、僕たちの乗る車が発進した。
直後、台東フジコが僕のリュックをまさぐった。
「あと、たしかハンディカムあったわよね?」
「はい。リュックの底のほうにあります」
彼女は頭を押さえながら、僕のリュックからビデオカメラを取り出した。
「ユーチューブにでも投稿するんですか?」
「それもいいけど、日本人は馬鹿だから、カメラを回せば撮影だと思って通報しないの!」
うむ。僕は通報するよう心がけよう。
外では文京ゼンイチが、バイクからずり落ちていた。
が、自ら走り、この車に追いつこうとしている。
「どこまでついてこれるかしら。杉並さん、もっと、スピード出して」
台東フジコはビデオカメラを回す。
杉並ルシエは何度も咳をした。
時速30キロメートル、40キロメートルと、メーターが回っていく。
時速50キロメートル。
文京ゼンイチは足をもつらせ、チャップリンの映画のように、音もなく転んだ。