J000 世田谷 ツバキ (23/135)

それは一瞬の出来事だった。


台東フジコは両手をバイクへ伸ばすと、文京ゼンイチの手首に手錠をかけた。


「私ゴルフはまだ練習中なの! それより一緒にドライブしましょう!」


「だっ! っざけんな!」


鈍い音が聞こえた。


文京ゼンイチが、持っていたダンロップのアイアンでフジコの頭を殴ったのだ。


あのアイアン、欲しかったやつだ。


「っつつ。相変わらず女性にも容赦しない番犬」


しかし、彼女は構わずウィンドウを閉めた。


「ほう、いつの間に。鮮やかですね」


彼女の手にはバイクのキーがあった。


あの一瞬で、彼女はバイクのキーを抜き取り、文京ゼンイチに手錠をかけたのだ。


外では新宿セイヤと文京ゼンイチが、何か言い合いをしている。


フジコはゼンイチの手から伸びるロープを、助手席の首元へ括りつけた。


「ほら杉並さん、出して。この道は混むから、信号で左折して」


「え? あ、はい」


信号が青になった。