0006 豊島 アヤカ (18/64)
「えっと じゃあ ここで」
改札の前で、セイヤは一歩、あたしから離れた。
「は?何言ってんの?」
「え?」
「家まで送るでしょ?普通」
あたしは一歩、セイヤに近づく。
「仕事 代表とミーティングが」
セイヤはあたしから目をそらしながら、一人言みたいにブツブツとつぶやいた。
本当に嫌だしムカつくけど、仕事を頑張れと言ったし、セイヤの地位も考慮しなければいけない。
「分かった じゃあ電話には必ず出てね」
あたしって、なんていい女だろう。
「ああ」
別れ際のセイヤは、とてもうれしそうだった。
今に、あたし無しじゃ生きれなくなるから。
改札の先のセイヤの背中を、見えなくなるまで見送りながら、そう思った。
あたしもこれから仕事だったが、その日は休むことにした。
セイヤを手に入れた、今日の興奮と、これから始まる夢の一時に浸りたい。
そんな素敵な今日に、客のモンなんて舐めてられるか。
あたしは、そう自分に言い訳しながら店長に電話した。