J000 世田谷 ツバキ (11/135)
杉並ルシエは何も言わない。
そんなこと、言わなくても分かるといったところか。
「これだけの技術、犬豚家畜に使うなんて、もったいない。僕はそう思ったのです」
「SCMは世田谷さんが作ったんじゃないんですか?」
「その質問は杉並さん、貴女自身の興味によるものですか?」
「え? あ、はい」
「実は……僕が尊敬する、とある大学教授が作りました」
台東フジコがこちらを見た。
「彼は僕の恩師でした」
ねえ、墨田教授。
墨田教授は天才だった。
それは認める。
だが、その行いは小学生がする夏休みの実験と、なんら変わらないものだった。
これだけの技術を用いて、商品化は考えていなかった。
「僕はこの技術を拝借し、複数の生産に成功した」
「いいの? そんな話をここでして」
「今さら事実は変わりませんよフジコさん。僕の告白を、母のように優しく聞いてください」
彼女は「ええ」と言って、僕の膝にそっと手を添えた。
墨田教授はその後、自殺したと聞いた。