J000 世田谷 ツバキ (10/135)

「……雨が降りそうですね」


台東フジコは「ええ」と言って、空の先を見た。


運転中の杉並ルシエが、バックミラー越しにこちらを見る。


「あの……訊いてもいいですか?」


「はい、何でしょう?」


「なんで、SCMをばら撒いたんですか?」


「杉並さんは、ネットの広告でSCMを手に入れましたね」


「はい」


「逆に問います、貴女は何故、SCMを手に入れたんですか」


「……あ、あたしを暴行した男に、復讐をするために」


杉並ルシエは目黒マサカズからレイプされ、さらに別の大学生グループにも暴行を受けた。


一瞬の間のあと、彼女はそう答えた。


「結構。すべてはやってみよう、から始めました」


フジコさんは窓の外を見つめたまま、「いってみよー」と言った。


そういうところ、嫌いじゃありません。


「やってみよう?」


僕は少し尻を浮かせ、ソファーへボフンとめり込ませた。


「ジャンプですよ。思いを行動に、情緒からの行動です」