J000 世田谷 ツバキ (6/135)

──数十秒後、車がバックを始めた。


ギュルっと、不器用なブレーキの後に、台東フジコが車から降りた。


「運転って楽しいのね」


「僕の腹スレスレのところで停まった。ゴールドですか?」


「無免よ。ゴメンね」


僕の足元には、さっきまで僕を脅していた2人が倒れていた。


いや、厳密には脅していたのは3人だった。


新宿セイヤの走る姿が、視界の外れに見えた。


「ごめんなさい、1人逃がしちゃった。3人がかり……リュウオウちゃまも本気であなたを捕まえる気はなかったのかしら」


息を潜め、新宿セイヤも僕の背後に立っていたのか。


「諸々、構いません。いかがですか中央さん、車に轢かれるほうの気分は?」


「台東……フ、ジコォ!」


中央アタルは足を押さえ、ポケットに手を入れた。


「だーめ」


「ぐぁっ!」


台東フジコは彼の携帯電話を蹴ると、僕の背中のホコリをポンポンと掃った。


「中央さん、これであたしの存在があなたの心に深く、ふかーく刻まれた」


2人をエアバッグにしたものの、僕のスーツに車の汚れがついてしまった。


「遅かった?」


「いいえ、グットタイミングですフジコさん。リュウオウくんは?」