J000 世田谷 ツバキ (5/135)
後頭部からの衝撃。僕の額が、車のボンネットに当たった。
「黙って車に乗ってよ!何も知らないくせに、人を知ったような口聞かないで」
「……その通り。人は人を語るほど、人を知らない」
後ろにいたのは足立シヲリではなく、杉並ルシエ。
「そうそう、杉並さん。24歳の誕生日おめでとう。宅建の資格は取れましたか?」
「そうやって住所から人のこと根こそぎ調べて、気持ち悪い」
「君も似たような真似をしたでしょ、目黒さんに」
「うるさい!」
「杉並ルシエ、挑発に乗るな。こいつは車で連れてい……」
中央アタルの言葉をさえぎり、車のエンジン音が聞こえた。
「あれは……俺の車か?」
中央アタルが自身のポケットをまさぐるなか、タイヤをギュルギュルと鳴らし、狂ったバンパーがこちらに向かってきた。
「走れ!」
「あっ」
その場から離れようとする2人の手を掴み、僕はこう言った。
「その眼鏡、いいですね。どこで買ったんですか──?」