J000 世田谷 ツバキ (4/135)
「中央さん、あなたはそんな残酷なことができる人じゃない」
「……黙れ」
「以前、目黒さんを車で轢いたでしょ? あれは事故だ。SCMの命令によって、あなたは主人の命令をやむを得なく聞いただけ。悪いのはあなたじゃない」
SCMの効力は確か。
「元凶は貴様だ」
「人のせいにするほど、あなたは子供じゃない」
「貴様の話を素直に聞くほど、俺は大人ではない」
「ふうむ、自分を責めることはない。あなたは真面目過ぎる」
困ったことが起きたとき、僕は自分の脇の臭いを嗅ぐ。
自己の臭いで心を落ち着かせるのだ。本能がそれをさせる。
「そして優し過ぎるからこそ、苦しんでいる。何かトラウマを抱えていますね? 身近な人に不幸でもありましたか?」
彼は僕の耳から手を離した。
「予定変更だ。俺の車に乗ってもらう」
挑発には乗らないか。
中央アタルの精神力は無類、彼は自分の弱さを知っている。
台東フジコが、彼の存在を懸念するのも頷ける。
僕は車の窓ガラスを見て、一つの真相に気づき、閃いた。
「……そうそう、その目黒さんですけど、彼は今、主人が変わり過ぎた副作用で病院にいます。うわ言をッグ」
「よせ! 杉並ルシエ!」