0022 江東 キヨ (26/34)
ベランダを見ると、倒れたゼロの姿が見えた。
おれは身を低くして、イスで窓を割った。
火がさらに強まるなか、ゼロを抱き締めた。
「何やってんだ!バカ!あっ!」
けど、ゼロはおれから離れ、部屋の中へ行ってしまった。慌ててすぐに追いかけた。
そしたら、ベランダの方にも火が。
おれもゼロも閉じ込められた。
「……なんで、こんなことしたんだ」
おれは抱きかかえた我が子にそう訊いた。
ゼロはゆっくりと顔を上げ、微笑んだ。
「やっと、怒ってくれた」
子供とは思えない言葉だった。
すべてを理解した。
全部、腫れ物に触れるような扱いをした、おれが悪かったんだ。
「……ごめんな」
おれがそう言った途端、ゼロの瞳に周囲の炎が映った。
我が子は言う「熱い熱い痛い、水筒!冷たいの!」って。母親は「大丈夫だから」って。
今さらになって、錯乱したんだ。
肌に焼けつく痛みと、胸元で暴れる子猿の衝撃。
両方とも、辛くて痛くて仕方がなくて、心臓にまでそれが貫いた。