0022 江東 キヨ (24/34)
外は暑いから、あの子に水筒を持って行かないと。
その時期は気温38℃を越える猛暑が続いた。
記録に残るほどの熱帯夜。ムシムシして、子供たちはもちろん、おれ自身も寝不足の日々が続いた。
その晩、あまりにも熱くて、重いまぶたを無理矢理開けると、おれの視界に幻覚のような煌きが映った。
それは火だった。
コンロにダンボールが。天井が見えないほどの煙。
火事だ。
おれが目覚めるのと同時に、シンノスケも起きていた。
「うわっ!すげ!すげ!ママ!ママ!」
「大丈夫!大丈夫だから!」
火は既に、台所周辺のクロスへ燃え移り、洗面所から水を出す余裕もなかった。
とにかく物凄い量の煙だ。
おれは身を屈め、シンノスケを抱きかかえた。ゼロがいない。
「外に、外に出なきゃ!」
扉は開いている。扉は開いている。
外への扉は開いているよ。
そう唱えながら、リビングへの扉を開けようとした。
「開いてないよママ!」
扉は……開いていなかった。