0022 江東 キヨ (23/34)
「ぜっ、ろぐッ!」
おれが止めても、信じられないほどの力で、母親であるおれを殴り、突き飛ばし、彼はばあばの遺体を揺さぶっては、棺や線香を蹴散らした。
ばあばの瞳は閉じたままだったけれど、どうか生き返らないで、と願った。
暴れる幼きその瞳は、ばあばの人生を苦しめ、狂わせた、あの男の瞳と一緒なんだよ。
ゼロの身体には色濃く、あの男の血が流れていると確信した瞬間だった。
それから、おれは大きな失敗を繰り返してしまう。
シンノスケに比べ、ゼロに対しては腫れ物に触るように接してしまうんだ。
時には、余計に厳しく怒鳴り、反抗的な彼の瞳を見るのが嫌で、頬を叩くこともあった。
躾(しつけ)だ、普通の母親も子供の頬くらい叩く。
自身にそう言い聞かせるも、自分の本心に気付き、認めたくなかった。
恐ろしかったんだ。自分の息子であるはずのゼロが。
夕暮れの道路にチョークで落書きをして遊ぶ子供たち。
「……もう帰るよ」
そう言って、おれは「まだ遊びたい」と言うシンノスケの手を引っ張った。
ゼロも……まだ遊びたいと駄々をこねたので、放っておいた。
家に帰り、おれはシンノスケの手を入念に洗った。
「痛い痛い」と言うシンノスケに「道路は汚いから」と彼の手を洗いながら、痛いのはおれだよと、絞るような心で叫んだ。
道路に取り残された子も、我が子。
子供の遊び相手が不潔だからと、我が子から我が子を遠ざけ、真偽を確認もせずに、神経質になっていった。
あの最低な母親は、おれなんだ。