0022 江東 キヨ (8/34)
おれ達は同じホテルに泊まっていた。
「江東キヨさん。四季の逆で季四さんね。ジャマイカには旅行で?」
ホテルのバーで酒を飲みながら、彼はおれに、そう聞いた。
まさか死に場所を求めて、なんて言えやしない。
「ああ、まあ。墨田さんはどうしてジャマイカに?」
「研究したいことがあってね」
「研究?」
「趣味の範疇だけど、僕は植民地研究も少し、かじっていてね。ジャマイカの歴史はご存知で?」
「あまり……」
木製の卓は、日本で見られるものよりも雑だし、ちょっと湿気が残ってた。彼はそこに肘を着き、卓の中央にあるロウソクのともし火を見つめていた。
「この島は、スペイン領、イギリス領を経て、港は海賊の船着場にすらなった」
「へえ、海賊」
墨田はおっさんのくせに、ピンクとオレンジを基調にした花柄のシャツを着ていた。
焼けた肌で、腕が太くて、白髪混じりの口ひげをたくわえ「お前こそ海賊っぽいわ」と、思ったのをよく覚えている。