0022 江東 キヨ (7/34)
殺人事件の発生率は日本の、およそ90倍。
もちろん、日本語を話す者はいない。現在もだけど、当時のジャマイカの治安は最悪だった。
けど、おれはこの国に興味があったんだ。
興味……いや、どこか自暴自棄だったのかな。いつ死んでも構わないと思ってた。
団地のような閉鎖空間である日本から抜け出し、外の世界に飛び出して、敢えて日本では考えられないような状況に、身を置きたかった。
自分のことを、誰も知らない場所に行きたかったのかも知れない。
ジャマイカはどこに行っても、焼いた土とお香を混ぜたような、香ばしい匂いがした。
それはマリファナの香りだった。
もちろん違法だけど、各所でおおぴらに売られ、天然のマリファナは身体にも心にもいい、と現地の人は言った。
そして、こんにちは。
ストーニー・ヒルという高級住宅地を歩いているときに、彼とおれは知り合ったんだ。
後から知った事は、とある大学で助教授をしている事。
知り合ったとき、彼は40代だった。
第一印象はインチキくさい、遊びなれてそうなおっさんだと思ったよ。
今となっちゃ、墨田という名字しか覚えていない。