0022 江東 キヨ (5/34)
子供心にも、それは理解していた。
新聞にたった三行しか載らない事件だった。
遺族と加害者の家族以外に、誰の心にも残らない事件だった。
そして、加害者の娘であるおれには身長を貫く程に残る事件だった。
やがて大人になってきて、真っ先に誓いを立てたんだ。
おれは、この身に流れる血、遺伝子を一片も残さない、って。
扉なら開いてるよ。帰るのも聞き続けるのもあんたの自由さ。
おれは今、あんたのいる世界の砂よりも小さく、宇宙よりも広い闇から語っているんだ。
知った所で何も得しない。ただ、少し心が動くだけ。
おぞましさすら感じる自分の血肉と心に、気が狂いそうになる瞬間は何度もあった。
けれど人間はそう簡単に壊れるように出来ていない。どうやらおれも特にそうらしい。
年をとれば、老化して骨が軋み筋肉が萎んで物覚えが悪くなり、脳の細胞が少しずつ使い物にならなくなるとは逆に、同じくらいの真理で、子供には成長していくしかない。
人の体は育つ様に。心も治る様に。そう出来てるのさ。