0022 江東 キヨ (4/34)
けれど腕を掴む母親の手は強く、痛かった。
子供は首が攣(つ)ってしまう程に振り返り、友達に「また明日も遊ぼうね」と言った。
家に帰ると、母親は皮が剥がれてしまうぐらい入念に、我が子に手を洗わせたんだ。
子供は「お母さん痛いよ」と言うが、母親は「念の為よ」としか言わない。
その子が遊んでいた友達は、アトピーだった。
手の皮が爛(ただ)れ、皮が剥け、痛々しく赤と白のマダラな皮膚があらわになっていた。
伝染るかどうか、なんて母親は知らない。知ろうともしない。何という病名なのか、そんな事を聞くこともない。
今もアトピーの友達は、何も知らないまま1人、チョークで絵を描く。が、どうもつまらない。
仲良くなった子の母親が「あの子とは、もう遊ばないの」と言った頃、日が暮れた。
おれは「あの子とは、もう遊ばないの」って言われた方の子。
別にアトピーだった訳じゃない。
小さな町で、団地っていう閉鎖空間だったから、みんな知ってたんだ。
おれの父親は人殺しだって。