0021 千代田 マリヤ (82/85)

ぼくは、その金具を手に取って、あらゆる方向から眺めた。


こんなもので奴隷ねえ。未だによく分からない。歯の裏につけるだけでねえ。


ただ、つけたとき、歯茎に突き刺す鋭い痛みが、心地いいというか、妙にしっくりした。


他人がつけていたものなのに、ぼくだけのために設計された、オートクチュールのように思えたの。


ぼくは口を開け、もう1度SCMを装着した。


んん。そうそう、この感覚。乾いた口内で、歯茎から血を吸い出すような、鉄の味。生を実感する、この感覚。


口の中をモゴモゴさせていると、ぼくの視界にDVDのケースが映った。


ああ、そうだDVD、延滞してたんだった。


今夜はゆっくり過ごそう。延滞していたDVDを返して、また新しい映画を借りるの。


キヨゼロとゲッコウの件から数日後、その夜、ぼくはレンタル屋に向かった。


その時だった。


『キュィーン』


え?今のって、SCMの反応だよね。


ぼくはつけたまま、レンタル屋に行っていた。