0021 千代田 マリヤ (65/85)
ぼくの本当の名前は麻利矢。マリヤ。
ネットでマリアと名乗ったのは、えっと、そうだ。
以前ぼくが入院していた時、隣のベッドにいた女性がキッカケだ。
ぼくと同じ名字でマリアという女性がいたんだ。
入院しているくせに病人とは思えない明るさで、よく喋る子だった。女性看護師の相談に乗るくらい姉御で。
ぼくと同じ名字と似たような名前なのに、ぼくとは全然違った。入院している最中、何度も優しくされたけど物凄い劣等感を感じてたんだ。
そう言えば、よく幼馴染の話をしていた。子供の頃はリーダーシップがあったし頭も良かったのに、20歳を過ぎた頃には大学を辞めてしまい、無職でだらし無い奴になってしまったと愚痴ってた。愚痴なのに、楽しそうに。
もう1人の千代田マリアは海外留学を機に、彼に就職して欲しくて自分は死んだことにしたって言ってた。家族ぐるみで嘘を付いて。
けどその矢先、本当に病気を患い入院したって。
「嘘から出た誠ってやつだね。おかしいでしょ?」そう言って笑う彼女を、今になって鮮明に思い出す。
ざまあみろって思いながら、どこかたまらなく羨ましくて、その後ぼくは自分をマリ“ア”と名乗ったんだ。
ビールの缶を握り過去を振り返っていると、家のチャイムが鳴った。
さっきから落ち着かない様子のキヨゼロがぼくを見る。
来た。シンノスケくんだ。