0021 千代田 マリヤ (49/85)

「とにかく話を聞いて欲しい」ぼくの必死の説得に、彼は不思議な顔をしつつも病院から歩いて数分の喫茶店に移ることを提案してくれた。


何でも一週間ろくにご飯を食べていないとかで、カレーを注文する時の笑顔は子供みたいな無用心を感じさせた。


病院近くの喫茶店には高齢者が多かった。


昭和を感じさせる店内、ベッコウみたいなグラス。年配の人が居心地良さそうなレトロ調の喫茶店だった。


カレーがくる間も、彼が食べている間も、ぼくは何もかも、ありのままを話した。


17年前、江東という家族に起きた火事、不幸。


その際にキヨという母親が死んだ事。


ぼくはその友人、同じ店で働いていた先輩と後輩。


彼女の息子は2人、双子の兄弟。


弟はゼロ、その後、児童養護施設に送られた。


そして兄のシンノスケは行方不明になった。


「……それが俺?」


カレーを食べ終わったシンノスケは自身を指差し、キョトンとした表情でこちらを見た。


「そう」


「なんていうか 頭っから言いたく無いんすけど……」


彼はツイストパーマをかけた頭をぽりぽりとかく。



「俺 母ちゃんも父ちゃんもいますよ?」



ククッ。



心が玉の様に震え、歯の間に堪え切れない笑いが響く。



熱心に人の不幸を語った後、ぼくは思わず笑いそうになってしまった。



このシンノスケはゼロくんの兄弟じゃない。


「うん」


そんな事、とうに知っている。