0021 千代田 マリヤ (5/85)
次の日、ぼくは普通に出勤した。
スクーターに乗って、肌寒い朝の国道をかける。
道路を走るのは、トラックやハイエース。みんなこれから仕事でしょ。
社会が始まる朝の道。
そんな車同士を縫って、隙間を走り去る。
そう、ぼくはスキマ。
本格的に美容師を始めて10年以上。けど今の店も10軒目。
最初に勤めていた系列では、たらい回しにされた。
何度も同じ系列の違う店へ転属してさ。
元々人見知りだし、ぼくは自分が不細工な事を知っている。
自信が持てなくて、接客中のコミュニケーションも苦手だった。
無理して会話しても空回りするだけ。頭だって特別良くない。
そうして全てにおいて、あまり喋らべらなくなった。
不細工で無愛想。自分が接客した夜には必ず電話が鳴り、そうクレームが来るようになった。
同僚に対しても同様で、付き合いも苦手。
クレーム、たらい回し、また初めから。成長するきっかけすら与えられない。
人と仲良くなるタイミングも無い。
悪循環。不運が重なり、何度も何度も店を回された。
そんな有り得ない境遇にも、どこか納得していた。
ぼくはスキマなんだ。