0020 板橋 ゲッコウ (77/82)

女の悲鳴に、敵の悲鳴に、どうしてこうも。


次の瞬間には、ツバキンとフジコのキスが浮かぶ。


どいつもこいつも、何故こうも汚い。


何故、我の心に不快をもたらす。


我はただ、信じるべき絶対が欲しかった。


ポケットに入れたままのSCMを握る。


これで本当に奴隷が出来るのだろ。



いっその事、マリア様の忠実な僕(しもべ)になりたい。



何も思考せず、疑問を抱かず、ただ崇拝する者の礎(いしずえ)となり、主君の夢の柱になろうか。


それも、1つの幸せだろう。


反面、我の思考の一片、普通の18歳のゲッコウが疑問を投げる。


…我はマリア様の事、何も知らないのでは無いか?


顔しか、職業しか、名前しか、大食である事と白身魚が食べれない事しか、大量の薬を飲んでいる事しか。


我は知らないじゃないか。


暗闇の布団の国で、唯一光る携帯の画面。


我は淡々とメールを打っていた。


『マリア様の本名は何ですか?』


何も思考せず、ただ浮かんだ言葉を送信した。


我はそのまま瞳を閉じ、眠りに着いた。