0020 板橋 ゲッコウ (75/82)

その場にいた者たちも後列の車へ乗り込み、我だけが取り残された。


車達はそのまま、公園方面へ走り去る。


たった数十秒の出来事。


真っ白になった頭の中。数秒?数十秒?数分?


やっと浮かんだのは『マリア様』という言葉。


マリア様に連絡しなくては。


寒くないのに震える手で、我は取り出した携帯からマリア様へ電話した。


この時間は出ないかもしれないという懸念や心配は無かった。思い付きさえしなかった。


「何やってるの?」


マリア様はあっさり出てくれた。混乱した頭で状況を説明すると、まずそう言われた。


「も 申し訳ありません…」


どうしろと。あの状況で。


瞬く間に、大人達によって誘拐されたのだ。


「いいや 今日いい事があったから」


いい事?


「何が…あったんですか?」


「秘密だけど ちょっとだけ教えてあげる ね」


電話越しでも、マリア様が唇を舐めたのが分かった。


「見つかったの 探してた人が」