0020 板橋 ゲッコウ (70/82)
我に声をかけて来た女子が「もう!」と後ろの連中にぶつけると、教室で小鳥たちのクスクスと鳴く声が響いた。
「気にしないで あんなの」
嘘だから。とは言わなかった。
何だ。なんなんだ、この状況は。
「板橋くんヴィジュアル系好きなの?あたしも好きだからカラオケで聞きたいなって」
いや我が好きなのは演歌だが…。この女。
色素の薄い焦げ茶色の髪。黒コンタクトを入れた大きな瞳。そこから生えた長いまつ毛。
下品にも生足を出したスカート。
頬には夕暮れ色のチーク。
その女子は飛び切りのブスだが、我を誘っているのは本当なのか。
脳内では騙されるなと叫ぶ声が聞こえるが、この胸の高鳴りは何だ?
マリア様以外に、我の心を動かす者がいたのかこの世に。
数秒の間の中、行き着いた答えは。
この女が言っている事が本当なら、別に断る理由は…。
「はっが!」
「どうしたの?」
思い出したー!
我はJKの監視をしていたのだ!
窓に振り向いた瞬間、下駄箱への渡り廊下を歩くJKの姿があった。