0020 板橋 ゲッコウ (69/82)
「…何だ?」
肩まで伸びた横髪を耳にかけ、女子は言った。
「あたし達これからカラオケ行くんだけど…良かったら一緒に行かない?」
春。
そんな言葉が我の脳裏に浮かび、全ての思考が止まった。
しかし春の一文字を蹴散らし、脳内にいる黒き我が言う。
イタズラだ。ほら、後ろにいる女子たちがニヤニヤしてこちらを見ている。
女子達はクラスでも目立つ方で、明るく快活な集団だった。
ドブスの集まりだ。
男子の視線がそいつらに集中しているのは知っていたが、理解に苦しむルックスだ。
我をからかおうとしているのだ。我をエサに笑いを生もうとしているのだ。
いや待て。
もう1人の我が、画面から消えた春の字を引っ張り出す。
もしかしたら純粋な誘いかもしれないぞ。
孤独そうな我を見て同情したのかも。
同情?そんなもの必要な…。
「板橋くん結構女子の間で人気なんだよー!その子板橋くんの事カッコイイってー」
取り巻きの女から声。
「なっ」
なんだと!?