0020 板橋 ゲッコウ (58/82)

講堂の空間には入れないが、手前の倉庫なら、窓から侵入できると知っていた。


「っしょ ぬおっ!?」


転げ落ちそうになりながらも、身長よりも高い窓からの侵入に成功する。


窓からの明かりしか無い、闇の物置。そこにはコントラバスやサックス等の楽器が並んでいる。


足元に注意しながら、我はその場へしゃがみ込み、携帯を開いた。ここなら、一先ず安心だ。


深呼吸すると、カビ臭い空気が肺を犯す。手汗が引く程、我は緊張していた。


落ち着け、落ち着けゲッコウ。


「ふううっ」


保存したメールを改めて確認すると、我がやっとの思いで手に入れたリストの写しが表示された。


「ふっ ふふ ははっ!」


やりました、やりましたよマリア様!ゲッコウが、購入者リストを手に入れました!


平仮名の部分等を直し、更に報告の文章も添付し。我はメールを送信した。


そして、マリア様に電話をかけた。


「もしもし?」


受話器越しに聞こえるマリア様の声に、暗い室内でも天上の光臨を感じた。


「マッ マリア様!やりました!所有者を2名!見つけました!メール!メールは!」


興奮して話す我自身の声が、受話越しに聞こえた。


「今 仕事中だからさあ また後にしてくれない?ね?」


「はがっ!?」


直後、一方的に電話を切られてしまった。