0020 板橋 ゲッコウ (49/82)

頬に涙が伝ったが、拭かないまま、目を凝らした。


「ふはあ それじゃあ続きは今夜にしましょう」


「ねえ 1つ聞いていい?」


台東から離れ、自身の唇を手で拭うツバキ。彼女は無表情のまま、何事も無かったかの様に立っていた。平気なのか?あんな事をされても。


「前任の保健医の子供の父親って もしかして あなた?」


「何故 そうお思いに?」


「ただの勘よ」


前任の保健医が妊娠していたのは我も知っていた。その父親がツバキだと?


「その素晴らしい勘を 是非僕の為に使って下さいね 今後は」


ツバキの答えで、我も恐らく台東も感じた。


前の保健医の子の父親は、こいつだ。


「あと これ 約束のリストです」


ツバキが卓の上に書類を置く。だが、台東はそれを眺めるだけだった。


「まさか 本当にくれるとは思わなかったわ」


「こういう約束は守りますよ」


また何かあったら指示を出す、そう続けて、ツバキが台東に背を向けた。


まずい!こっちに来る!