0020 板橋 ゲッコウ (48/82)
我だって、別に嫌いじゃなかった。特別な感情は無かったが、教師と生徒として、毎日会っていたのだぞ。
こんな姿、見たくなかった。
汚い。汚い。何て汚くて下劣なんだ。
我は今にも泣きそうになるのを堪え、そして強く拳を握り誓う。
やはり、信じるべきはマリア様だけだ。
大人は汚くて下劣だ。
今、我に出来る事はこの現場を見る事。そしてマリア様に伝える事。きっと、何か有益な情報になる。
我は再び、扉の隙間を覗いた。
「う あっ」
思わず声が出る。蚊の鳴く程の小さな。
今度は、キスをしていた。ツバキと台東が。
初めて、生で見た。
下卑な音が保健室に響いている。赤い柔らかいのが、絡んでチロチロと見える。
だが、我は既に興奮などしていなかった。ただ衝撃的で下劣な情事だと、男と女の接吻を見下していた。
見たくない、本当は。気持ち悪い、こいつら。
我はひたすらに、学校の保健室で唇同士を鳴らす、最低の大人達を見ていた。
すぐ死ね、今死ね、早く、死ね。
全てはマリア様の為、全てはマリア様の為、全てはマリア様の為。
我は念仏の様に心でそう唱え続ける。