0020 板橋 ゲッコウ (34/82)
ほんの少し。ほんの少し前向きなマリアの返事に、我は興奮する。
「もちろんです!」
街灯とビルの明かりの中、我とマリアは写メを撮る事にした。
実際に撮れたのは、鼻と口元を隠し、目元だけのマリアとニヘラ顔の我だったが、ボタンを連打して保存した。
「あと あの 」
「今度は何?」
再度、ペダルに足を掛けた彼女を我は呼び止める。マリアは再度、振り返った。既に不機嫌の域だ。
「我 いや僕は マリア様に永遠の忠誠を誓います だから だから深愛なる絆と供に 僕を導いて下さい」
「いいよ 分かった」
やった。
我は本当に嬉しかった。
絆とケジメ、そして、手に持ったSCMという画期的な機械。不思議で刺激的な必然の戦いも、我は手に入れた。
我は一晩で、生きるべき標目を有り余る程、手に入れたのだ。
生まれて初めて、身体にドクドクと脈打つ真の活力を感じた。我は生まれ変わったのだ。
この月光の下、マリア様によって。
自転車で走り去るマリア様を見送りながら、そんな感傷と興奮に浸っていた。
直後に、終電も金も無い事に気付く。
結局は次の日の昼になるまで、そこから歩き続け、なんとか家に帰った。