0020 板橋 ゲッコウ (30/82)

「心得た マリア…様!」


「うん いいね 気分いい」


マリアの喜びは我の喜び。そして既に我は彼女を尊敬していた。


様付けで呼ぶ事に、大きな抵抗は無かったのだ。


マリアは夜道を歩きながら、上機嫌でハミングする。


「♪フンフフフーン フフン」


後ろで腕を組み、少し腰を曲げてリズムを取って。


天上を見れば、星こそ見えないが巨大な円輪。


今夜は満月だった。


この薄汚れた街の月光の下で、歌うマリア。


まるで深夜の妖精。いや、女神だ。


鼻歌は、やがて歌となった。



「♪黄金の表階段に座っているのは皇帝 皇太子 王様 王子 靴屋に洋服屋 お前は誰になる?善良な人たちを待たせずに 早く出てこい!」