0020 板橋 ゲッコウ (29/82)
時間は深夜。外は更に寒く感じるが、視界に酔ったおっさんや大学生くらいの人通りが見えた。
既に終電は無い。自分が帰れるか否かよりも、マリアはどうやって帰るのかが気になった。
「マッ マリア!」
我は心で小さな覚悟を決めてから、マリアの小さな後姿を呼ぶ。
「なに?」
「どうやって帰るのだ?」
明日は仕事、休みだろうか?このまま一緒に、どこかで語り明かしたい。そう言おうとした。だが。
「ぼく お店に自転車 置いてあるから ね てゆうかさ」
自転車で帰れる程、ここから近いのかと思考した矢先、マリアは少し不機嫌そうな表情を見せたのだ。
「ぼくの事 マリア様って呼んでくれない?」
「えっ!?」
マリアの突然の提案に、言いたい事を忘れる。
「なんかさ一応年上だし 呼び付けってのもどうかと思うのね ぼくの事 尊敬してるんでしょ?」
「ああ まあ そうだが」
「それに1度呼ばれてみたかったんだよねー 様付けで」
様を付けたら、マリアが喜ぶ。絆、深まる。
我の脳内で、その方程式が成り立つとクイズの正解音が聞こえた気がした。