0020 板橋 ゲッコウ (19/82)
我の父親と一緒だ。
昔、母にゲップを注意された父はこっそりとゲップを出す為、なぜか歯の隙間から出した。以来、食後に時々「ピュィッ」という音を鳴らす様になったのだ。
父親に対しては何とも思わなかったが、マリアがすると、たまらなく可愛いと思ってしまった。高音を鳴らす楽器の妖精みたいだ。
「何か思ったより喋らないのね」
「そ そんな事は無いぞ」
マリアの様子を注意深く観察していたのもあるが、正直、緊張しているのだ。
「ねえ 今の日本はどう思うとか メールで言ってたじゃない?」
「あっ ああ」
食事を終えた彼女はタバコをふかし、我にそう言った。
「自分が正義だと思っている奴が多すぎるよ ね?」
「えっ?」
マリアの言葉が、我の心に突き刺さる。自分が正義だと思っている者?
「悪い奴なら 攻撃してもいい 周りが悪いって言ったら攻撃してもいい 周りの意見に流される奴が多すぎる 自分で見もしないで 相手の立場に立ちもしないで 理由も調べないで みんな事情があるのに 行動や言動に至る理由があるのに ぼくはね そう思う」
「同感だ」
だが、正直ほとんど意味が分からない上に、最初にマリアが言っていた言葉が我の事の様で、怖かった。