0020 板橋 ゲッコウ (18/82)
「我もそう思う」
結局、マリアは全ての料理をほとんど平らげた。と、思ったが、よく見れば並んだ皿には、それぞれ米粒や肉片がごっそりと残っている。
『料理を粗末にする女と付き合うな、お前も粗末にするから』
不意に親に言われた事を思い出した。
だが、マリアは違う。我とマリアは恋人では無いし、そもそも我の親の方がおかしいのだ。言っている事が。
「あーもう食えね」
少し訛った様にも聞こえるマリアの喋り方。彼女はそう言いながら、バッグを弄(まさぐ)った。
今度は卓の上に、バッグから大量の薬を並べ出す。銀のアルミに包まれたカラフルな錠剤たちが散らばった。
パキパキと音を鳴らし、彼女は次々にそれを水で飲み込む。
初めて見る光景に、我の思考は止まりそうになった。
きっと、大病を患っているのかも知れない。薬を飲む為に氷無しの水を要求したのかもしれない。我は思わず薬を飲む彼女から目を背けた。
薬を飲み終わると、不意に「ピッ、ピュィッ」と、口笛の様な音がマリアから鳴った気がした。一瞬は幻聴かと思ったが、再度同じ音が聞こえたのだ。
我はその音に聞き覚えがある。
ゲップだ。