0020 板橋 ゲッコウ (15/82)
店内の明かりは一部を残して暗くなっていたが、それでもマリアは我の髪に付き合ってくれたのだ。
「あー 疲れた お腹空いたーね」
「すっ すまん」
マリアは独り言の様にそう言いながら、片付け始める。我の謝罪は聞こえていない様子だった。
店を閉め、エレベーターに乗って外へ出ると、来た時よりも更に寒くなっていた。淡いピンクのダウンジャケットを着たマリアが我に振り返る。
「ね ご飯食べよう」
「あっ ああ!」
マリアと食事。まるでデートの様だ。
夜の街は深夜にも関わらず大人やケバケバしい女共が道を歩いていた。マリアと共に歩いていると、すれ違う者達が我とマリアを見る。
我は心の中で嘲笑っていた。
見ろ、我をもっと見ろ!
我は今まさに生まれ変わった銀髪の月虹!そして隣を歩く彼女は日本最後の女神、マリア!
我らは崇高たる哲学を持ち、友情や愛情を超えた絆で巡り合った運命の2人!愚民とは違うのだ!全てが!
遂に、遂に我は生まれ変わったのだ。今まで隠れる様に自宅に引き篭もっていた。
だが、我は今、現実の、この夜の街で、注目を浴びている!視線!視線は何て心地いいのだ!
恍惚、高揚、月虹。
そんな言葉が我の心に浮かぶ中、マリアと我は、駅から少し離れた24時間営業のファミレスへ入った。