0020 板橋 ゲッコウ (10/82)
今まさにシャンプーが終わったのか、彼女はタオルで髪を拭かれていた。
女性の美容師との会話が聞こえる。一瞬は、どっちの声が彼女か分からなかった。
「あっ 来た」
「本当に来たの?奴隷くん」
奴隷?
「ゲッコウくん?」
マリアの髪の毛を拭きながら、女性の美容師の方が我に声を掛けてきた。
「あ ああ」
「今見ての通りだから あっちで待ってて」
我は美容師に言われた通り、玄関側の待ち合い室で待つ事にした。
黒いソファーに座り、ヘアカットの雑誌や、メンズのファッション雑誌を手に取る。
高校に入ったばかりの頃は必死で読み漁ったものだが、久々に手に取った最近のファッションは、2年前とあまり変わっていない気がした。
30分程度、雑誌を読んでいると、透明の数珠で出来たカーテンの向こうで「ありがとうございましたー」という客を引き取る声が聞こえた。
マリアのセットが終わったのだ。我は慌てて雑誌を棚へ戻し、立ち上がってカーテンから飛び出した。
そして、こちらへ向かうマリアと遂に対面したのだ。