0020 板橋 ゲッコウ (6/82)

メールの内容は、ただ礼を言い、己の哲学を語れというものだった。決して平伏さず、いつもの調子で。


我はネットで相談を受ける時、心の医者として威厳ある態度を取っていた。


その人物にも例外無くそう接し、現実では携帯の前で座る、犬の気持ちで返事を待った。


数時間後に返って来た返事は、ただ一言。


『面倒臭い』


我は昂ぶり慌て、焦った。


このままでは、やっと見つけた痛みの理解者を逃がしてしまう。だが、ネットで培った我の威厳もある。


自身のプライドを維持しつつ、我とマリアはメールのやりとりを続け、簡潔な返事にもひたすら話題を振った。


主に送ったのは現代の政治や、未成年犯罪。信仰についても。


正直、我自身が考えた事も無い話題ばかりだったが、自身を大きく見せようと、一人前の者、哲学ある者として見せようとしていたのは間違いあるまい。


マリアは、そんな我の必死に気付いてか気付くまいか、ただ簡潔な内容を返してきた。


根気良くメールを続ける中で、マリアが女性である事と、互いに都内に住んでいる事が分かった。そして現在32歳である事も。


『ぼくはね?32になってもマイクロミニを履くし、美に対しては誰よりも気を付けてる』