0019 練馬 ヨシムネ (54/63)

まあ、イカサマっちゅうイカサマはする気ない。


「じゃあ 行きましょうか」


エイアはそう言って、玄関まで歩き出した。ワシはミナミが持っていた風邪マスクを着け、ドアを開ける。


勝負は今から1時間、より金を稼いだ者の勝ち。


この事務所は空テナントだった場所。以前は喫茶店だった為に、外観は海の家の様な木造の爽やかさがある物件だった。


外に出ると、ワシの部下が向かい側のブロック塀にコーヒーの缶を置き、タバコを吸っていた。


「あ お疲れ様でっす!」


安物のスーツを来た部下は、ワシへ頭を上げた直後、ワシらの様子を見て驚く。


「あれ?会長 お口どうされました?」


そう言いながら、事務所から出て来たエイアを見ていた。やはり、エイアの存在には気付かなかったか。


「どうでもいいよ それより 今いくら持ってる?」


「え?えっと2000円くらいです」


「それしか無いの?何やってんのもう」


「すみません」


まあ、確かにあまりいい給料は渡していないけどさ。


「全部よこして あと他の連中呼べるだけ呼んで お金持って来させて」


「え?え?どういう事すか?」


「いいから 見せ金が欲しいだけだから 後で返すから根こそぎ持って来させて」


「わ 分かりました」


部下は早速、携帯電話を取り出して他の連中へ連絡を始めた。


「グルルル」


足元のワン公が唸る中、ワシは後ろに立っていたエイアとミナミへ振り返る。


「人徳こそ財産 イカサマじゃあ 無いよねえ?」