0019 練馬 ヨシムネ (43/63)

荒川エイアはワン公の頭に手を置き、視線を落とす。


「この子も一緒です けど勝負は私1人でします」


ズシオウマルとかいう犬は、クンクンと鼻を鳴らし、卓添いに並んだ1つのイスへやたらと鼻を近付けていた。


何このバカ犬。


たしかあそこはツバキが座っていたイス。


あやつ、犬に好かれる臭いなのかしら。


「ズシ」


エイアが呼ぶと、ワン公は何も吠えないまま、彼女の足元まで戻る。


「つうかお前Sモードじゃねえのかよ」


「Sモード?」


「あー 主人の状態って事だし」


「だから?」


荒川エイアの様子は、透明感のある無垢そのものだった。


「ああ?普通奴隷差し向けるだろ」


「何で?」


ミナミがイライラするタイプなのは明白だけど、仮にも敵地へ飛び込む者の落ち着き方ではない。


「ああ?自分が負けるリスク考えたらそうすっだろ!」


「だって」


これは、まるで。



「他人にまかせたら 負けちゃうかもしれないじゃん」



「は?」



エイアの言葉に、ミナミが絶句する。



つまり自分は必ず勝つと。



彼女の心持ちはまるで、微力過ぎるアリの巣を荒らしに来た、無邪気な子供。