0019 練馬 ヨシムネ (41/63)

女はクイッとアゴで窓を指す。


窓。まさか窓から。


ワシとミナミは窓へ振り向いた。否、窓は閉まっている。


ワシが女の方に視線を戻そうと、した瞬間。


「はひっ!」


びっくりした。


女の2本指が、視線を戻したワシの目の前にあった。


「こうやって」


初めて発した言葉がそれだった。この女、フェイントで部下の目を潰したのか!


「嘘だろ 」


「うん 嘘」


「は?」


ミナミのつぶやきに、女はあっさりとそう答えた。


「見張りの人がトイレ入った隙に ここへ入っただけ」


女はいつの間にか、開いていない缶コーヒーを片手に持っていた。


そうか。見張りにやってから大分経つ。便所くらい行くわな。


女の発言で思ったよ。


この女が神がかっているとかではなくて、部下が、ワシらが単に人間なんだって。


自分でも何を言っているか分からないけど、ワシはそう思った。