0016 葛飾 アンジュ 蝶 編 (56/79)
「それでも いいわ」
フジコ先生は無表情でそう言ったけど、ジュリアは今にも笑いそうだった。
移動する。北ミナミがさらえる。リュウオウ様の思い通り。リュウオウ様が喜ぶ。
ジュリアは喜びで歪みそうな唇と頬を、必死で隠した。
「どう?ミナミさん?」
窓の外から、パカンと鳴るテニスの練習をする音や、部活の掛け声が僅かに聞こえた。
「ちっ」
北ミナミは舌打ちしたけど、それが返事だった。OKなんだ。
「では どこで勝負しましょうか?」
「そうねえ」
フジコ先生は考える素振りを見せたけど、そういえば2人を学校から出すのが目的だから、場所の指定は考えていなかった。
「公園」
「公園?」
「学校から駅までを少し反れると シーソーのある公園があったでしょ?あそこがいいわ」
確かに、学校から駅までの間には小さな公園がある。シーソーもあるし、ジャングルジムやブランコと砂場がある普通の、小さな公園。うちの生徒が時々、喫煙をしている場所だなんて話は聞いた事あるけど。
「いいでしょう ではそこで勝負をしましょうか」
「ちっ 勝手に決めてさあ」
北ミナミはそう言っていたけど、イスに置いていたバッグを肩に背負った。
ツバキ先生も、ジュリア達のいる出口側まで歩き始める。
やった。2人を学校から出せる。