0016 葛飾 アンジュ 蝶 編 (47/79)
「ふうん」
フジコ先生はため息を吐き、もう一度イスに座った。
「もしも 私がシンノスケと違う出会い方をしていたら」
突然、シンノスケという男の名前を出す。フジコ先生が恋焦がれる、SCM所有者。
「SCMが無くても私は彼に服従していた 例え誰に反対されても 彼の子を孕んだら産もうとするでしょうね」
そんな話をしだしたフジコ先生の瞳は、寂しそうに見えた。
「ジュリアの気持ちが分かるって言いたいの?」
ジュリアがそう聞くと、フジコ先生は胸元からSCMを取り出し、自分とジュリアの間に掲げた。
「こんな物 無くても 人は人に恋い焦がれて 服従する事だってあるって事よ」
フジコ先生は角度を変え、SCMを愛しそうに見つめていた。彼女の視線の先に、シンノスケとかいう男が映っているのはジュリアにも分かる。
SCMの主従関係だけで、仕事や恋にまで繋がるなんてさあ。時と場合によっては聞き流す話なのに、今日はそのどれもがジュリアの心を突き動かす。
「こんな物が存在する私達の世界は もしかしたら誰かが読む物語なのかも知れないわね」
「はっ?」
突然 フジコ先生はそんな訳の分からない事を言い出した。そしてジュリアを見る。
「だとしたら せめて 人気があるといいわね」
「何 言ってるの?」
ジュリアが疑問を聞くと、フジコ先生は少し笑った。
「ふふ 何でもない 落ち着いて 今は眠りなさい」
そう言って、フジコ先生はジュリアがいるベッドのカーテンを閉めていった。