0016 葛飾 アンジュ 蝶 編 (46/79)

「私にもよく分からないし 今更大抵の事では驚かないけど あなたは嫌いじゃない」


フジコ先生は立ち上がり、腰を曲げてジュリアに目線を合わせてきた。


「悪い事は言わない 堕ろしなさい」


フジコ先生の言葉が1つ1つ、ジュリアの胸に突き刺さる。けど、ジュリアにも意地があるんだ。


理由があるんだ!


「堕ろさない! ジュリアは産むの!」


自分のお腹を両手で守り、フジコ先生を睨み付けてそう言った。


「産むの だなんて まるで子供ね」



子供が子供の子供を産んで。



フジコ先生の顔が、そう言っていた。


考えも何も無いジュリアには勢いしかない。だからこそ一歩も引かない。ジュリアを支えているのは意地と勢いだけだった。


フジコ先生としばらく睨み合う。お互い一歩も引かず、時間だけが過ぎた。


「分かったわ 勝手にしなさい」


先に折れたのは、フジコ先生だった。


「あんたなんかに 分かんないよ」


何でだろう。フジコ先生が先に折れたのが、無性に悲しかった。お母さんやお姉ちゃんがいたら、見放されるって、こんな気持ちなのかな。