0001 港 タキオ (10/19)
店内の薄暗い暖光でもテカった薄長い唇。目は大きく、鼻筋はすべり台の様で、整い過ぎた顔は目元のホリが深く、ハーフっぽい。
スタイルはスレンダーで、目検でも160cm以上あると分かる。手足は細く長く白く、シミが無い。毛穴すら無いと思わせ、見ただけでサラサラな肌だと想像させてくれる。
間違い無く僕や友人が、土下座しても付き合えないレベルの女だ。
黒服に紹介されたその女は、驚くほど綺麗だった。
生まれて初めて『見とれた』と脳が認識し、次に『欲しい!』と本能が叫んだ。
友人の自慢気な表情を視界の外れで感じる中、僕は歯の裏の金具を押し込む様に舐めていた。
僕に付いた女も綺麗だったが紅い髪で肌が黒く、いわゆるギャル系で好みじゃない。自分を「ジュリアね」と呼ぶあの女に比べれば景色でしかない。
友人はスロットに勝った話を大げさに話し、ジュリアはそれを無理矢理上げた様なテンションで聞いている。
僕はイライラしていた。
さっきまでバカにしていた友人が、自分がたまらなく欲しいものと話している。無性に喉が乾き、水割りでそれを癒そうとする。
「タバコ吸い過ぎじゃない?」
ライターの火を包み、それを差し出す景色のキャバ嬢。
黙れ 景色。
そして頭の中では、歯の裏の機械の事でいっぱいだった。
他人を服従させるSCM。
もしかして、さっきの歯の振動はSCM同士を引き合わせた時のアラームじゃないのか?