?日目 (7/8)
毎日お見舞いに行って
毎日澪の顔を見て
声を聴いて
それなのに気付けなかった。
澪が自殺を考えていたこと。
「蓮見くん!!早く来て!
澪ちゃんが…っ!!」
蓮見「…澪が、どうかしたんですか?」
聞く間もなく看護師さんに連れて行かれるがまま、辿り着いた場所は毎日行っている澪の病室。
……っ!?
蓮見「……ー澪ッ!!」
いつもは閉まり切っている窓が、今日は開いていて
そこから吹く風が澪の長い黒髪をなびかせていた。
澪は、
今まさに窓から飛び降りようとしているところだった。
蓮見「お前っ、何してんだよ!
その冗談はさすがに笑え「冗談でこんな事しないよ!」
そりゃ…いくらからかうのが好きな澪だってこんな事はしないと思うけど、
本気で飛び降りようとしているなんて思いたくない!!
蓮見「…なんで、だよ」
澪「……私の足は、もう前のようには動かない」
蓮見「リハビリをすれば回復するって医者も言ってただろ!諦めんなよ!」
澪「私だって分かってる!諦めたくなかったよ!!
でも…駄目なんだよ…
もうバレーは出来ない。この足じゃ走ることも、跳ぶことも出来ないの!!!」
泣き叫ぶ澪に
俺はただ立ち尽くす。
なんて声をかければいい?
澪がリハビリを頑張ってきたのだって俺が1番よく知っている。
澪にかける言葉が…
見つからない。
確かに
医者は歩けるようには何とかなるとは言っていた。
ただ、
前のようにスポーツをするのは難しいと、諦めた方がいいと言っていた。
どうしたらいい?
どうしたら…
澪「……自分がこんなに弱かったなんて思わなかった」
蓮見「弱くなんかねーよ。お前が思っているより、お前はずっと!」
澪「…ううん、弱いよ。
私は強がりだけど、本当はすごく弱い人間だったんだ」
蓮見「…澪、」
澪「ごめんね洸太。
”大好きだったよ”…」
ふっ、と
その瞬間、もう澪の姿は無くて
「きゃああああッ!!!」
看護師さんの悲鳴と
澪が落ちた音が
この静かな病室にこだました。
澪は死んだ
俺の目の前で
***