7日目 (16/27)



ちょっと風に当たってくる、そう言って少しだけ1人になる時間を作った。

こんな話を聞いたら、昴さんと少しでも長く一緒に居るべきなんだろうけど今は少し、そんな気分にはなれなくて。





無理だよ







笑って、一緒に居るなんて


今でもこんなに泣きそうなのに昴さんの顔を見たら間違いなく泣いてしまう。泣いたりなんて出来ない。

昴さんはきっとすぐに自分に何かあったんだって分かるから。


泣けば、誤魔化しは効かない。







あっ、澪ちゃんに連絡』





すっかり時間経っちゃったけど、今からでもちゃんと連絡しなくちゃ。



ピッ








澪ちゃん?』







澪ちゃんはワンコールで出てくれた。

ずっと携帯を握りしめていたのかな。






《星ちゃんッ!?

ずっと心配してたよ!良かった、無事なんだね!

今は洸太と一緒かな?》



うん!大丈夫、蓮見くんも一緒に居るよ』


《そっか、それなら安心



それからね、星ちゃん。私は言わなくちゃいけないことがあるの》



言わなくちゃいけないこと?』






洸太にも後で言うつもり、

そう言った澪ちゃんの声は凄く小さくて、か細くてなんだか悲しそう。







私、今日が命日なの。



何言ってるんだって思うよね!私も自分で言って何言ってるんだって思うし!》







今日が命日ってどうして?あんなに元気なのに










私、本当は死んでるの。自殺したときに》


!』


《あっ、
だからってオバケじゃないよ?


これは機械のカラダで。私自身の体はもう

私はね、私のデータをコピーした









機械のカラダ







このワードは昴さんに該当する。



つまり、今の澪ちゃんは








ロボット』



そうゆうこと。


私は、片桐澪のロボットだよ》



……どうして澪ちゃんのロボットが!?



《私、昔から洸太と洸太のお父さんが作るメカやロボットが好きで研究室にもよく遊びに行ってたんだ。

中学2年生の時かな?私はひとつ、洸太のお父さんにお願いをしたの。


私のロボットが欲しいって。


理由はほんと、ただの興味本位で。


あ、でも、


もしも私に何かあったら、これだけは洸太に伝えたいことを伝える為。この理由もあるかな》







澪ちゃんが蓮見くんに伝えたいこと。


それは言われなくても分かった。澪ちゃんはきっと、間違いなく、






『蓮見くんが大好きなんだよね、澪ちゃん』


うん、小さい頃からずーっと好き。


でも言えなかったんだ。幼馴染みの関係が壊れるのも、洸太に振られるのも怖くて。


これから一生、洸太に好きって言えないと思ったから2の時の私はそんな無理なお願いをしたんだね。



でも、お願いして良かった。

今こうして洸太に伝える事が出来るんだから》








あはは、と笑う澪ちゃんに


我慢していた涙が一気に溢れ出る。








み、おちゃっごめんね!


ごめんなさい、私が悪い!私と出逢わなければ澪ちゃんはっ』



《そんなこと言わないで!


星ちゃんのお兄ちゃん七瀬のことは、そりゃ恨むし、憎いけど!


星ちゃんと友達になれて、片桐澪は幸せだったんだよ!》


でも!澪ちゃんが死んで、私はっ』



……星ちゃん。

お願いだから死なないで、自殺なんて止めて。


後悔してからじゃ遅いんだよ。



私は、後悔している。死にたくなったあの日を思い出すとああもっと頑張れたのにって思えたんだもの。


生きていれば必ず良いことが待ってる。


どんな小さな幸せでも、生きていれば必ず!》









ボロボロと涙を流し

情けない声をあげながら泣いた。




私はまた良からぬな考えが頭を過ぎっていたから尚更だった。



昴さんが居ないなら、私もなんて。



昴さんのこと、やっぱりまだ諦めたくない。


何か手がある筈なんだ。

死ぬ気で考えればきっと!








《電話ありがとう。

最後に話せて良かった!


私のカラダ今日限りで全機能停止になっちゃうから、洸太に気持ちを伝えに行くね!》







最後だというのに、この前向きさ。



それは何だか懐かしくて、やっぱり澪ちゃんなんだなって思った。私は前からこの強さと明るさに惹かれていたんだ。








澪ちゃん




また、助けてくれたね。




ありがとう。