帰宅したいんだよ (6/7)

ーーーその頃。


大釜「・・・だから言ったじゃないか。”死ぬ順番など関係無い”と」


まるでゴミを見る様な瞳で見下す大釜と


狂歌「かはっ.......化物......め.....」


血塗れで倒れる狂歌の姿がそこにはあった。



大釜「どうやらお前の力を過信していた様だ、なぁ?狂歌」


大釜はしゃがみ込むと虫の息の狂歌の髪をグイッと持ち上げた。


狂歌「・・・・虫の息。はっ....笑わせるな。お前は....その”虫”如きにやられるんだよ」


大釜「・・・・・・・・・」



ガゴッ!!!


廊下に鈍い音が響き、狂歌の巨体が壁に叩きつけられる。

飛び散った血液がまるで現代アートの様に芸術的な模様を描いていた。



大釜「図に乗るな。たかがボディーガードの分際で....本気で勝てるとでも?」


本気で、この会社から消え行く者を救えるとでも?



大釜「笑わせるなよ、下っ端。お前は正社員ですら無い。言ってみればただの腕力だけが取り柄の、臆病な能無しさ」


思い出すよなぁ?あの日の事を。


いつもビクビク何かに怯えていたお前を拾ってやったあの日を。



自分に怯え

家族に怯え

世間に怯え


そして


世界に怯えていたお前を拾ってやったあの日を。



大釜「その恩返しがコレか?あ?お前の腐ったゴミの様な人生に”光”を与えてやったのは誰だ?この私だろうがよ!!!



ゴキィ....!!


狂歌「・・・・・・・・・・っ!!」



大釜「お前みたいなゴミはいくらでも代わりがいるんだよ!!力が強いだけのゴキブリが!!私に楯突くだぁ?調子に乗るなよ....?クズが!!!


バキッ!!




狂歌「・・・・・・・・・・・・・っ」



俺っちは...........




生きている事も許されない....ゴミ.....。




こうやって、蹴られ、殴られ、罵倒され。

いつも怯えて、下を向き、ただ命令に従うだけの人形の様な人生。


それが俺っちの..................





大釜「・・・・・・・・あ?おい....何だぁ?その手は.....」



狂歌「・・・・・・・・・・・・・・」



・・・・・・・・違う。


違うだろ........?なぁ、俺っちよ。




大釜「おい。勝手に私の蹴りを止めてんじゃねぇ.......よぶふぉ!!!



狂歌の固めた拳が、大釜の柔らかな腹を的確に捉えた。



大釜「か......は.......てめっ.......」




大釜「・・・・・違う。俺っちは.....会社に縛り付けられた操り人形なんかじゃない....」



だって.......


アイツが言ってくれたじゃないか。





”仲間だ”








俺っちの事を、そう呼んでくれたじゃないか。



狂歌「俺っちは.....もう..,.紐に繋がれた奴隷なんかじゃないんだ....」



紐を切り、自分の足で立つ、1人の.....人間なんだ。