最悪の部下に恋した男 (5/10)
笠井「・・・・はい。こちらクレーム処理課です。・・・・はい。はい?え?悪臭がする?」
まだ冷めていない頬を手で摩りながら俺はいつもと変わらず受話器を取った。
笠井「あ、わかりました。じゃあそちらの機種ナンバーを教えてもらってもよろしいですか?」
・・・・えーっと。あれ?ペンが無いな。
笠井「鷲宮さん。ペン貸してもらえる?」
電話口を手で押さえながら俺は鷲宮さんの方を向いた。
鷲宮「は?ヤダ」
だが、鷲宮さんはムスッした表情でそう答える。
顔がまだ赤い。まさかさっきのキス未遂事件を引きずっているのか?
笠井「鷲宮さん?今は冗談を言ってる場合じゃ....」
鷲宮「いーやー・・・・だっ!」
バシッ!!
笠井「痛いっ!ちょ、何ですぐ不機嫌になると物を投げるの!?しかも消しゴムだし!」
鷲宮「うっせ///自分で考えろ、バーカ」
笠井「・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・まさか。
鷲宮さん....さっきのキス未遂事件の事を”怒ってる”んじゃなくて
キスできなくて”拗ねて”るのか。
笠井(ぶふっ....///やっべ、ニヤけが....)
元ヤンキーでそこら辺の男より男っぽいのに、こういうとこだけ乙女なんだよなぁ....。
ま、そこが可愛すぎるんだが。
鷲宮「な....何だよ.....///じ、ジロジロ見んな。ハゲ」
笠井「・・・・鷲宮さん。やっぱり俺が....チューしてあげるううううう///」
テンションが上がりきった俺は
鷲宮「ちょ....っ///おいバカ!ふざけんな!!」
受話器から手を”離して”鷲宮さんに飛びかかったのだった。
暖かい昼下がり。
この距離が、とても心地よい。