取り戻すだけだ (7/10)
犬村の言葉に俺は眉を顰めた。
笠井「・・・・元は”人間”?」
犬村「・・・・あぁ、俺の父は科学者でな。危ない実験を繰り返していたんだが....ある日....」
俺は父の作り上げた薬品を全身に浴び
そして、目が覚めたらこの姿になっていた。
笠井「・・・・何だよ、それ」
犬村「劇薬だが唯一元の姿に戻れる薬がポケットに入ってる....早くそれを.....」
と、その時。
不可思議「はいはい。お喋り禁止」
ゴッ.....!!
笠井「・・・・・・・・・・・っ!?」
鈍い痛みが腹に響き
直後、俺は膝から崩れ落ちていた。
霞む視界で見上げれば
そこに立っていたのはセーラー服の少女。
笠井「かはっ......!てめぇ.......」
不可思議「そこの子犬もアンタも黙る。なーに呑気にお喋りしてんの?」
ゴキッ.....!
不可思議が俺の脇腹を蹴り飛ばしたと同時に、何かが折れる音がした。
笠井「ーーーーーーーーーーーっ」
いっ........てぇ.......っ!!
もう泣きたい。
家に帰って温かい布団で眠りたい。
残業代出るんだろうな、おい。
笠井「いぬ.....むら.......」
俺は最後の気力を振り絞り
犬村のスーツのポケットに手を伸ばした。
何やら硬い小瓶に触れる。
これだ.......これがあの.........
不可思議「だーかーらー。抵抗すんじゃねぇよっ!!」
顔を怒りに歪ませた不可思議が
俺の顔に向かって足を振り上げる。
”あぁ、俺死んだな”
身体中の細胞がそう感じたらしい。
静かに目を閉じ
不可思議の蹴りが迫ってくる感覚を味わいながら
俺は、しっかりと、”犬村に小瓶を手渡した”。
笠井「ーーーーーーー後はよろしく」
微かに犬村が微笑んだ。
ーーーそんな気がした。
ガギィン!!
まるで金属がぶつかり合った様な音が響き
暫くして俺は痛みが無い事に気付きゆっくりと目を開いた。
不可思議「・・・・あれ?どうしたの?その格好」
そこには
雄鶏「・・・・・・・・・・・・?」
不可思議の重い蹴りを止める
黒夜「・・・・何だ、あの姿は」
犬村の姿があった。
笠井「・・・・・よぉ。ヒーロー」
犬村「さぁ、反撃だ」
”5本”の指でしっかりと止める
犬村の姿が。