歯車が廻り出す (6/7)
ーーーその頃。
鷲宮を取り戻そうと奮起する笠井であったが、裏課に所属する蓬莱に足止めを喰らってしまう。
笠井「どけよ。俺は鷲宮さんを助けに行かなきゃならないんだ」
蓬莱「どかないよ。ねぇ、自分の立場理解してる?ねぇねぇ、裏課の人間に楯突く事が何を意味するか理解してるの?」
笠井「知るか。ただ一つ言える事はお前みたいな”クソガキ”には負けねぇよ」
蓬莱「・・・・・・・・・・・・」
笠井のその一言は
どうやら蓬莱の押してはいけないスイッチに触れてしまったようだ。
蓬莱は相変わらず仮面の様な不気味な笑みを浮かべたまま
握っていたバットを高々と掲げた。
蓬莱「うん....あはは。もういいや。ねぇ、もういいよね?クビじゃなくっても。ブチ殺してもさ?」
笠井「・・・・俺を殺すのか?そんな事したらお前だってタダじゃ済まないだろ?」
蓬莱「大丈夫だよ。お前は”クビになってこの会社を去った”って事にしてあげるから。ねぇ、いいでしょ?」
笠井「・・・・ったく。とんだブラック企業だな」
都合が悪い人間はクビと称して消すのか。
今までそうやって何人の社員が消されていったのやら....。
名前も知らない、面識も無い社員が音も無く消え、誰1人その事を気にも止めない。
不必要な”部品”は捨てられ
”歯車”は変わらず回り続ける....か。
笠井「くそっ....まるで暗躍機関だな。笑えねぇ話だ」
下呂さんも同じ様に裏課に捕まっているのか?
だとすれば時間が無い....こんなところでいつまでも立ち止まっていられねぇんだ.....!
笠井「もう1度だけ言う。そこをどけ」
蓬莱「あはっ♪ねぇ、そろそろブチ殺してあげる」
蓬莱が高々と振り上げたバットを俺に向かって振り下ろす。
正直、止められる自信が無かった。
俺.......野球嫌いだしなぁ。
ったく......
蓬莱「ーーーーーばいばい♪」
俺はヒーローにはなれねぇのか。
俺が静かに目を閉じ
バットが空を切る感覚を頭上の数cm手前で味わっていた時だった。
「仲間に手出しはさせん!!」
そんな渋いダンディーな声が聞こえてきたので
恐る恐る目を開いてみると。
笠井「・・・・・・・・・・・・は?」
俺の目の前には
蓬莱「・・・・・・・・あれぇ?何でお前がここに?」
一匹の喋る犬が立っていた。
犬村「同じ社員として....仲間の危機は見過ごせんよ」
笠井「・・・・・・・・・・・・」
犬が喋ってる!!