犬村 湾という男 (9/9)

鷲宮「消え....た?」


は?何で?


だって今、この角を曲がって.....。



鷲宮(・・・・ちっ。意味わかんねぇ)



でも....あのスウェット男が言った事は大体覚えてる。


その中でも気になったワード.....DPP


何かの略称か?


鷲宮「あ~あ、わかんね。元ヤンの私には難しすぎんだよなぁ」



まぁ、いいだろ。今は別に。


とにかくクレーム処理課に戻らねぇと笠井のバカが.....




笠井「あ、いた!お~い!鷲宮さぁん!



鷲宮「・・・・・・・・・・・・あ?」


噂をすれば何とやら。


前方から間の抜けた顔の上司が歩いてきやがった。


ったく....ヘラヘラ笑いやがって。



笠井「よかったぁ。探したよ」


鷲宮「べ、別に頼んでねぇし!」


笠井「いやいや、課長の命令でさ。本当は俺だって.....」



・・・・・・・・あ、やべ。



鷲宮「・・・・本当は俺だって.....何だよ。言ってみろよ、その続きを」


笠井「あ、いや.....違う違う。今のは違うから.....ね?」


鷲宮さんは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべると

全力で俺の足を踏み付けた。



笠井「いっ......!?な、何すんの....鷲宮さん.....」


鷲宮「別に。怒ってねぇし。全然怒ってねぇし」


そう言ってスタスタと足早に歩く鷲宮さんの背中には

”只今、激怒中”という文字が見えてもおかしくない程で。



笠井「・・・・・・・・・・・・はぁ」


・・・・まぁ、アレだよな。


女性の機嫌を直すには、アレしかねぇよな。



笠井「鷲宮さん。ちょっと待って」


大股でズカズカ歩く鷲宮さんを呼び止める。


鷲宮「あぁん!?何だよ、私は別に怒って.......」



眉間にシワを寄せながら振り返る鷲宮さんに対し



笠井「お疲れ様。鷲宮さん」



俺は優しく髪を撫でた。


シャンプーの香りが微かに漂う。




鷲宮「・・・・・・・・・・・・」


鷲宮さんは何も言わず暫く俺を見つめ


笠井「よく頑張りました」


その数秒後、顔を真っ赤に染め上げ荒々しく俺の手を弾いた。



鷲宮「うっせ!触んな!!」


笠井「ん~?あれ~?鷲宮さん顔真っ赤だよ?」


鷲宮「真っ赤じゃねぇしっ///やめろ!ジロジロ見んな!」


笠井「はいはい」




まさかこんなに



効果があるとは、ね。